みその知識

みその知識

みその効用

みその効用

「みそは医者いらず」という言い伝えがあります。昔からみそにまつわることわざがたくさんあり、みそと健康を結びつけたものが少なくありません。昔の人は、経験的にみその高い栄養価を知っていたようです。
そして現在、みそは栄養学や医学の面からさまざまな研究が進められ、その成果も次々と発表されています。それらの研究論文を中心にして「みそと健康」について紹介しましょう。


1.みそに含まれる主な栄養成分

みその原料である大豆は、発酵によって大豆にはない、または、あっても少量のアミノ酸やビタミン類が多量に生成され、栄養価はさらに優れたものになっています。また、大豆のたんぱく質は酵素によって分解されて水溶化され、その一部はアミノ酸となります。その中には生命を維持するために不可欠な必須アミノ酸8種類がすべて含まれています。
上記の成分のほかに、ビタミン(B1・B2・B6・B12・E・K・ナイアシン・葉酸・パントテン酸・ピオチン)、無機質(ナトリウム・カリウム・カルシウム・マグネシウム、リン・鉄・亜鉛・銅・ヨウ素・セレン・クロム・モリブデン)、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸、食物繊維などが含まれています。
なお、みその成分は下記の円グラフのように、水分、炭水化物、たんぱく質、脂質、灰分などです。

※図表はクリックで拡大します


2.みそが消化吸収がされやすいわけ

みその主原料である大豆のたんぱく質は非常に優れている半面、普通の過熱調理では消化吸収が悪いという難点があります。しかし、みそとして製造されると、大豆たんぱく質が酵素によって加水分解されて約60%が水分に溶け、約30%がアミノ酸になります。また、炭水化物はブドウ糖になって消化吸収されやすくなります。
つまり、大豆をみそという形で摂取することは、たんぱく質をより消化しやすい状態で取り込めることになります。したがって、大豆そのものを食べるよりも、みそで食べるほうが栄養素は消化吸収しやすくなるわけです。


3.みその効用に関する研究や論文

現在では、みそと健康についての研究は多角的に行われています。みその機能性を明らかにした論文の主なものは以下のとおりです。

①みそはがんのリスクを下げる

●1日3杯以上のみそ汁で乳がんの発生率が40%減少(厚生労働省研究班 2003年) 
●みその塩分は胃がんを促進しない(広島大学・渡邊敦光名誉教授 2006年)
●喫煙者が毎日みそ汁を飲むと死亡率は低下する(国立がんセンター・故平山雄博士 1981年)

②みそは生活習慣病のリスクを下げる

●みそは脳卒中、痴呆症、心臓疾患などの発症を低下させる(大妻女子大学・青木宏教授 1994年)
●みそ汁のある食事パターンが骨粗鬆症に効果(㈶癌研究会付属病院・陳瑞東医長 1994年)
●糖尿病の改善が期待される、みその褐色色素(女子栄養大学・五明紀春教授 1999年)

③みそは老化を防止

●発酵によってみそに老化制御機能が生まれる(東京農業大学・小泉武夫教授 1995年)
●みそは熟成過程で抗酸化力を高める物質が生まれる
   (東京大学名誉教授・大妻女子大学・加藤博通教授  1994年)

④その他の研究

●みそには血圧低下作用をもつ物質がある(食品総合研究所・河村幸雄室長 1993年)
●みそには美白効果がある(食品総合研究所・新本洋士主任研究官 1997年)


4.みそのコレステロールを抑制する働き

血中コレステロール値が上昇すると、動脈硬化などの血管の病気が促進され、脳梗塞、心筋梗塞、血栓症などの原因となることが知られています。コレステロール対策こそ、心臓疾患を予防する鍵といえます。
県立姫路工業大学・環境人間学部の辻啓介教授は「みその原料となる大豆には7つの有効成分があり、なかでも大豆油に含まれる不飽和酸であるリノール酸と大豆レシチンには血中コレステロールの上昇を抑える効果がある」という研究結果をまとめています。
「過去、欧米に比べて日本人に心臓病が少なかった理由の一つは、みそ汁を代表とする大豆食品を食べる食文化を継承してきたからだともいえる」と辻教授は記しています。


5.みそが胃がんのリスクを下げる

「みそが胃がんの発生リスクを下げる」ということについて、よく知られた疫学調査の結果があります。1981年10月、当時、国立がんセンター研究所で疫学部長をしていた故平山雄博士が日本癌学会で報告したのが、『みそ汁の摂取頻度と胃がん死亡率との関係』を調べた疫学調査です。
これによると、男女いずれも、みそ汁を飲む頻度が高い人ほど胃がんによる死亡率が低いことがわかります。ことに男性の場合は、みそ汁を「毎日飲んでいる人」と「まったく飲んでいない人」とでは、「まったく飲んでいない人」のほうが、胃がんによる死亡率が48%も高くなっていました。
このように、がん予防の見地からも、みその効果は評価され、注目されています。


6.毎日みそ汁を飲んでいると乳がんになりにくい

みそ汁と乳がんとの関係については、いくつかの研究成果が発表されています。その中から代表的なものを紹介いたします。 

「みそ汁の摂取が多いほど乳がんになりにくい」という調査結果が2003年に発表されました。発表したのは厚生労働省の研究班(主任研究者・津金昌一郎国立がんセンター研究所・がん予防研究部長)。研究班では4県14市町村に居住する40〜59歳の女性21,852人を対象に、みそ汁や豆腐、納豆などの大豆製品の摂取量と乳がんの発生率の関係を10年間にわたって追跡し、疫学的に調査を行いました。
 その結果、「みそ汁1日1杯以下」の人を1とすると、「1日2杯」の人の発生率は0.74、「1日3杯以上」の人の発生率は0.6の数値であることがわかりました。この結果、乳がんの発生率は「みそ汁1日1杯以下」の人よりも、「1日2杯」の人で26%、「1日3杯以上」の人では40%も減少していることがわかりました。


7.みそを食べると老化を抑える

老化というのは、全身の組織、機能の衰えを指しますが、細胞レベルにもそれは顕著に表れます。すなわち、生体内に過酸化脂質と呼ばれる物質が増えると、血管や体細胞、脳細胞などの老化が促進されます。以下の研究者が「みそは老化を防止する」と発表しています。

●みその原料である「大豆成分」が脳卒中の発症を抑え、長寿に貢献する
   (京都大学・家森幸男教授  1994年)
●発酵によって、みそに老化制御機能が生まれる(東京農業大学・小泉武夫教授 1995年)
●みそは熟成過程で抗酸化力を高める物質が生まれる
   (東京大学名誉教授・大妻女子大学加藤博通教授 1994年)
●みその成分「DDMPサポニン」が老化の原因となる活性酸素を消去する
   (東北大学・故大久保一良教授 1999年)


8.みそ汁が血圧の上昇を抑える

みそ汁の具に入れる野菜、芋類などに多く含まれるカリウムは、収縮している血管を拡張させる作用があるとされています。また、具に使われるわかめなどの海藻に多く含まれるマグネシウムは、カルシウムが細胞内に流入するのを抑えます。野菜を煮ると、カリウムやマグネシウムの一部は煮汁に溶けてしまいますが、これをそっくり摂取することができるみそ汁は、余分な塩分を体外へ排出する働きがあり、日本人の食生活に欠かせない機能食といえます。
食品総合研究所・河本幸雄室長は、ラットを使った実験で「みその抽出物(主にたんぱく質と糖)には血圧を低下させる生理作用がある」と1993年に学会で発表しました。大豆たんぱくとみその成分中に、高血圧防止ペプチドがあることが発見され、血圧を下げる効果が証明されました。


9.同じ食塩量でも、みその塩分は30%の減塩効果がある

「同じ食塩量でも、みそからの摂取は30%の減塩効果がある」という研究論文を共立女子大学家政学部の上原誉士夫教授が2012年に発表しています。
上原教授は、一言で塩分といっても、食塩そのものと、同量の食塩を含む「みそ」を摂取する場合とは、どのような違いがあるのかを実験しました。
食塩を多く摂取したときに血圧が上昇する体質をもった食塩感受性ラットを、①水道水 ②0.9%の食塩水 ③1.3%の食塩水 ④10%のみそ水(1.3%の食塩水に相当)の4群に分けて飼育、観察しました。
 2週間ごとの血圧の変化では、③に比べて④のみそ水を摂取していたラットでは血圧の上昇が軽度でした。このことは、食塩水そのものよりも、みそに含まれる食塩のほうが血圧の上昇に影響しにくいことを示しています。また、みそ水には、食塩水よりも30%もの減塩効果があることがわかりました。
 
みそ水が血圧を抑制したことで、腎臓の悪化も軽減していました。さらに、みそ水を摂取したラットでは心筋の繊維化が抑制されました。これは血圧の上昇による心不全の進行過程を阻止する可能性が考えられます。
以上の結果から、同じ塩分量でも食塩水そのものよりも、みそから摂取する塩分のほうが血圧の上昇を抑えられるとともに、みそに含まれる成分によって腎臓や心臓などの臓器障害が軽減されることがわかってきました。


10.骨粗鬆症(こつそしょうしょう)対策にはみそ汁がよい

骨粗鬆症はカルシウム不足から起こることが多い病気で、骨の密度が低く、スカスカの状態になります。骨粗鬆症の最大の予防法は、カルシウムの多い食品を継続的に摂取することです。
みそ汁は毎日のカルシウム源として大きなウエートを占めています。みそそのものに含まれるカルシウムだけでなく、だしを取る煮干しやジャコ、けずり節、具に利用される豆腐やわかめ、菜っぱ類にもカルシウムが含まれます。
下の表は、財団法人癌研究会付属病院婦人科の陳瑞東医長らが作成したみそ汁の食品成分です。豆腐、小松菜、わかめなどを具にして、ジャコでだしをとったみそ汁は、1杯で約233mgものカルシウムが含まれます。
「みそ汁は、野菜の食物繊維やビタミンも同時に摂取できます。これがみそ汁に代表される日本の食パターンの長所です。食パターンを見直して、みそ汁のある食卓を定着させることこそ、骨粗鬆症や生活習慣病を防ぐことにつながる」と陳医長は述べています。


11. みそは糖尿病の予防に効果

みその褐色色素は熟成過程で生成される成分で、メラノイジンと呼ばれています。女子栄養大学の五明紀春教授は動物実験で、メラノイジンが糖分の消化吸収速度を遅くし、食後の血糖値の上昇を抑える働きがあることを明らかにしています。
また、メラノイジンは、たんぱく質の消化酵素であるトリプシンを阻害する働きがあることも知られており、これによって膵臓機能を促進し、血糖値を下げるインスリンの分泌を盛んにすることが予測されます。これらのことから、みそには糖尿病予防の働きがあることが期待されています。


12.みその塩分はどれくらい?

みそに含まれる塩分は、すべて水分に溶けた形で存在します。そして、みその種類やこうじの種類・量によっても塩分量は異なります。みそを仕込むときに使う塩分は、辛口みその場合で12%前後、豆みそや甘口みそではやや少なく、白甘みそや江戸甘みそはさらに少なく5〜7%です。
日本食品標準成分表2010では、米甘みそ6.1%、米淡色辛みそ12.4%、米赤色辛みそ13.0%、麦みそ10.7%、豆みそ10.9%となっています。
みそに含まれる塩は、単に味を左右するだけでなく、熟成過程での発酵微生物の増殖や代謝、酵素作用をコントロールするうえで欠かせません。有害雑菌(枯草菌など)を抑制する働きもします。したがって、成分表からだけでは、食べたときの塩味は判定しがたいものです。


13.毎日のみそ汁。塩分の摂り過ぎ大丈夫?

みそは塩分の多い調味料と思っている人がたくさんいますが、100g中の塩分含有量が多くても少なくても、みそ汁として摂取するときは、塩分濃度は1%くらいとなります。
仮にみそ汁1杯150mlを摂取したときの塩分摂取量は1.2g~1.5g前後で、他の食品の1回の摂取量と比較すると、みそ汁の塩分は必ずしも多くはありません。また、みそ汁を作るときに具をたっぷり入れるなどの工夫をすれば、汁の量を減らすことができ、塩分の摂取も少なくなります。
塩分の摂り過ぎで間題になるのは、ナトリウムの過剰摂取が高血圧などの原因になると考えられている点ですが、同時にカリウムを摂取すると、ナトリウムは体外に排泄されやすくなります。ですから、みそ汁の具にカリウムを多く含む緑黄色野莱や芋類、海藻類のワカメなどを組み合わせることで、ナトリウムの摂取を抑えることができます。


14.みそに関することわざ

みそに関することわざは、昔から多くあります。有名なもので「みそ汁は朝の毒消し」というものがあります。「朝食のときの一杯のみそ汁は体にいいですよ」という意味のことわざで、みその栄養が大変優れているというところから発しています。みそ汁を毎朝飲むことで、いつの間にか健康が維持できますというのが、このことわざの意味するところでしょう。
みそと健康に関することわざを二つ紹介します。
●「みそ豆は七里帰っても食え」(みその大豆の美味なことと健康によいことを言った例え)
●「みそで呑む一杯、酒に毒はなし」(酒も、みそをつまみで飲めば害がないという例え)


15.ご飯とみそ汁は日本人向きの食事

いま、日本人の生活習慣病が急増しています。香川靖雄教授(女子栄養大学副学長・栄養科学研究所長)は、その原因の一つとして食べ物の洋風化を挙げています。香川教授によると、もともと日本人とヨーロッパ人とは遺伝子型が異なり、ヨーロッパ人は長い間、肉食に慣れてきたため、それに適応した型をもっています。
しかし、日本人は肉食に適応した遺伝子型はもっていません。逆に、日本人を含む東アジアの人々は飢餓に対する耐性を備えた遺伝子型を持っています。   この型は過剰な栄養には弱いという特性があります。そのため過食すると肥満になりやすく、軽い肥満でも糖尿病や心臓疾患につながります。これらの生活習慣病を予防するためには、「多様になった食品を上手に使いながら、日本型の食生活を維持していくことが重要」と香川教授は述べています。
伝統的な日本食の基本であるみそ汁とご飯を一緒にとれば、必須アミノ酸がバランスよく摂取でき、栄養学的に非常に相性がよい組み合わせです。


16.みそと食中毒

1997年、財団法人日本食品分析センターが病原性大腸菌O157をみそに大量に添加して、その菌の消長を測定しました。その結果、病原性大腸菌O157は増殖できず、徐々に死滅することがわかりました。菌の種類や保存温度条件によっても生存時間は異なりますが、熟成中のみそに病原性大腸菌O157の菌液を添加・混合し、30℃の保存温度下ではみそ中の病原性大腸菌O157は3日ですべて死滅、20℃でも大幅に減少するという試験結果が出ています。万が一みそに病原性大腸菌O157が混入したとしても、発酵熟成の過程や常温での流通過程において死滅します。また、開封後に汚染されたとしても、みそ汁では調理過程における加熱で死滅するため安全です。
O157だけでなく、大腸菌や黄色ブドウ菌などの病原菌がみそに混入して食中毒を起こしたという症例は今まで一例も報告されていません。