売れ残り?転じて郷土料理に
「せいげ(せえげ)」は福井県の冬の味覚越前ガニのなかでも「セイコガニ」と呼ばれる雌のズワイガニを使った郷土料理です。
ズワイガニと言えば山陰を代表する冬の味覚、海の王者とも呼ばれる高級食材で、中でも福井県の越前ガニは万葉集に詠まれた(?)、江戸時代中期には幕府に献上された、明治期には皇室で愛されたなど歴史と魅力を物語るエピソードには事欠きません。現代では世界中の美食家に愛されるブランドとして、一匹一匹に水揚げ漁港を証明するタグを付け徹底的に管理されています。
それほどの人気を誇る越前ガニですが売れるのはオスばかり、メスは体の小ささから取引価格がオスの半値以下という場合もあり、出荷もされないまま庶民の味として家庭料理や漁師飯に使われてきました。体は小ぶりでも中身の美味しさはオスに劣らず、引き締まった旨味を堪能できます。
産卵期に卵を抱いた雌の越前ガニを「背負い子」から転じ「セイコガニ」と呼び、外から見える成熟した卵(外子)のプチプチした食感と、甲羅の中にある未成熟の卵(内子)の濃厚な味はどちらも人気があります。ちなみに「セイコガニ」の漁獲期は資源保護の観点から11月6日〜12月末のわずか2ヵ月弱、極めて貴重な味覚とも言えます。
北前船が運んだ日本海の味
「せいげ」発祥の地と言われるのが福井県のほぼ中央、南えちぜん町の河野地区、江戸末期から明治中期にかけ北前船主として隆盛を誇った中村家の豪壮な邸宅が数々の美術工芸品とともに保存・公開されています。北海道から大阪へ日本海の西廻り航路を舞台に活躍した商人たちは「せいげ」に舌鼓を打ちながら商いを広げたことでしょう。
ここで「せいげ」のレシピを紹介します。材料は4人分で、セイコガニを2〜3杯、大根500g、岩のり10g。そしてお好みの味噌を80g用意してください。
まずはセイコガニの下ごしらえから。セイコガニを裏に返し外子(卵)を一房一房丁寧に取り外します。左側の足をまとめてつかみ、中心に向かって折るように胴体ごと甲羅から外し、右側も同様に外します。甲羅の口部分を指で押し外して内子とカニミソを取り出し、胴体に残っている内子やカニミソも丁寧に取り出します。胴体のガニ(三日月形のエラ)を取り除き、脚は関節の部分から折って外します。脚の中心に包丁の先端を刺し入れ、縦に下して二つに裂きます。少し根気がいりますが、甲羅とカニミソ、内子と外子、それに脚もばらばらにしておくことで調理が楽になり無駄なく食べられるようになります。
鍋に湯を沸かし大根おろしを汁ごと入れて準備したセイコガニと煮上げ、最後に味噌で味をととのえてできあがり。火を止めるタイミングで岩のりを入れていただきます。セイコガニから出る出汁の旨味を存分に吸った大根おろしの温かさに海苔の風味が加わり、プチプチした外子の食感が味を引き立てます。
海の王様越前ガニと、陸の王者恐竜
2024年3月に北陸新幹線が敦賀まで延伸し、福井県は首都圏からの観光客で一層賑わうようになりました。玄関口の福井駅で旅行客を出迎えるのは何体もの恐竜のオブジェ。福井県勝山市からは日本で発見された恐竜化石の約8割が出土しており、なかには「フクイサウルス」、「フクイラプトル」、「フクイティタン」など福井県で初めて発見された種属もあり、福井は恐竜王国と呼ばれているのです。
2000年に開館し2023年にリニューアルされた、勝山市の「福井県立恐竜博物館」はカナダ「ロイヤル・ティレル古生物学博物館」、中国「自貢恐竜博物館」と並び世界三大恐竜博物館と称される施設です。
館内には50体以上の恐竜骨格が展示され、巨大なジオラマや迫力満点のCG映像で恐竜時代にタイムスリップしたような感動が味わえます。学術的にも貴重な化石標本や地質学に関する資料も豊富で、実際の発掘現場や復元作業の見学・体験なども楽しむことができ、内外から多くの観光客が訪れています。
味覚の王様・越前ガニを味わい、陸の王者恐竜と対面できる福井県。是非お出かけください。
「カニ鍋」(2人分)
- エネルギー 235kcal
- 食塩相当量 3.6g
- ※一人分の値
材料
- ずわいがに
(たらば、わたりがになど好みで用意)殻付き800g - 長ねぎ2本
- 白菜4枚
- しゅんぎく1/2束
- 生しいたけ4枚
- 豆腐1丁
- その他、好みの野菜を用意
- だし汁(かつお節と昆布)1.5l
- Aみそ大さじ8
- Aみりん大さじ2
- A酒1/2カップ
- Aしょうゆ少々
作り方
- かには食べやすい大きさに切り、隠し包丁を入れる。
- 野菜や豆腐などもそれぞれ食べやすいように切る。
- 鍋にだし汁を入れてAの合わせみそを溶き入れ、かにと他の具材を入れて煮る。