石狩川に由来するご当地料理
北海道を代表する郷土料理「石狩鍋」は、その名の通り札幌市からバスで小一時間ほど揺られた先にある海沿いの町「石狩市」が発祥です。石狩湾に注ぐ石狩川は古くからサケ漁の盛んなことで知られ、石狩鍋も漁師たちが暖をとるために「味噌」をたっぷりと使い、鮭もいわゆる「あら」の部分が多く使われました。
鮭のあらは、頭部に近い「カマ」や中骨のまわり、「身端」と呼ばれる尾に近い部分や尾の部分などがとくに人気で、切り身のように商品にはなりませんが、脂が乗り、とろけるような食感を味わえます。
昆布出汁の鍋に、あらを中心とした鮭のぶつ切りと、キャベツや玉ねぎ、椎茸、春菊などたっぷりの野菜、そして豆腐を加え、味噌で味を整えていきますが、忘れていけないのがこんにゃく。糸コンニャクが一般的ですが、太めのツキコンニャクを使うことで、より豪快な食感が味わえます。
仕上げに、魚の臭みや味噌臭さを抑え、うま味を引き出すために山椒をかけるのも、本場の石狩流とする一方、北海道らしくバターを出汁に加えたり、贅沢にイクラを載せたりするバリエーションもあります。
レジャーブームを背景に全国区へ
本来はサケ漁の漁師たちが、大漁祝いや仕事の後の楽しみに味わっていた石狩鍋が全国に広がったのは、戦後、鮭の地びき網漁の光景がテレビを通じて広まり、観光客が来るようになってからのこと。海に入れた網を引き上げる時間を待つ観光客に「石狩鍋」が振る舞われ、北海道らしい野趣あふれる美味しさが評判をとったと言われています。その後、「戦後レジャーブーム」や「ディスカバージャパン」の追い風を受けて、石狩鍋は全国区の人気メニューへと成長します。
近年では地元石狩市でも、石狩鍋を提供する飲食店を倍増させる「石狩鍋復活プロジェクト」をスタートさせ、有名店を中心に石狩鍋の普及PR活動を行い、海鮮系の居酒屋や家庭料理としても、おなじみのメニューになりました。
ちなみに毎年9月15日は石狩鍋記念日に制定されていますが、これは石狩地方のサケ漁が全盛期を迎える時期と、「食いごろ」の語呂合わせが理由です。
鮭は北海道のソウルフード
石狩鍋の主役「鮭」は北海道の味覚の主役。かつて、北海道の白老町には、アイヌ民族の暮らしぶりを今に伝えるポロトコタンという施設がありました。独特のアイヌ楽器ムックリの音色が冷たく曇った空に響き、大きな湖の岸辺に幾重にも張られた物干し竿には、切り開かれた鮭が、数え切れないほど吊るされていました。アイヌの人々も、長く厳しい冬を過ごす備えとして、鮭を重用してきたのです。人間ばかりか、北海道土産の民芸品として有名な木彫りの熊も、口には必ず鮭をくわえています。味噌仕立ての石狩鍋をつつき、肉厚の鮭をいただくとき、厳しくも豊かな自然の恵みに対する感謝と畏れが感じられるのです。 2020年にポロトコタンは、民族共生象徴空間「ウポポイ」としてリニューアルオープンしました。
「石狩鍋」(2人分)
- エネルギー 256Kcal
- 食塩相当量 2.7g
- ※一人分の値
材料
- さけ切り身2~3切れ
- じゃがいも2個
- たまねぎ1個
- 青ねぎ2本
- だし汁2.5カップ
- みそ大さじ2~3
作り方
- さけ1切れを2~3つに切り、熱湯をかけ生臭みを取る。じゃがいも、たまねぎは乱切り、青ねぎは斜め切りにする。
- 鍋にだし汁を入れ、青ねぎ以外の材料全てを入れて煮る。あくを取り、野菜が柔らかく煮えたら、みそを加える。
- 最後に青ねぎを散らす。