甘味噌仕立ての雑煮で、新年を祝う
お雑煮は日本を代表する郷土料理として、出汁は味噌仕立てかすまし汁か、餅は角餅か丸餅か、具材は何を入れるかなど、全国に様々なスタイルで継承されています。中でも、香川県でお正月に食べられる「白味噌あんもち雑煮」は、特にユニークな存在と言えるでしょう。
いりこでとった出汁に、3〜5cm厚の輪切りにした大根と、同じく3〜5cm大に切った金時人参を入れ、柔らかくなるまで煮込みます。具材は他に、里芋や白ねぎなどをお好みに合わせて。
具材が柔らかくなったところで、あん入りの丸餅を入れ、柔らかくなったら豆腐を加え、一煮立ちしたら煮汁に白味噌を溶き入れます。
盛り付け方法もユニークで、はじめにお椀の底に大根を置き、その上にあん入り丸もちを置き、さらに豆腐や野菜の具材を盛りつけ、最後に青のりをかけていただきます。これは丸もちがお椀の底にくっつかないようにするためで、お行儀よく召し上がる、お正月らしい工夫と言えるでしょう。
使用する白味噌は、大豆の量を少なめに米麹を多く、塩分を控えた甘口の味噌。各家庭では正月を迎える1カ月ほど前から仕込み始め、じっくりと熟成させる作業が、年越しの準備として定着しています。飲食店ではお正月だけでなく、香川県独特の郷土食として1年を通じて提供しているところもあり、食事のほか、お酒の後の締め料理や甘味としても人気があります。
「讃岐三白」と「いりこ島」
白味噌あんもち雑煮の味付けに欠かせないのが、白砂糖です。江戸時代中期から、温暖で雨の少ない香川県では、殖産振興の一つとしてさとうきび栽培が奨励されてきました。刈り入れたさとうきびの搾り汁を煮詰めると、あめ色をした白下糖ができ、さらに白下糖を綿の袋に入れ、お盆の上で手もみをして研ぐことで不純物が取り除かれ甘さにまろみが出ます。この作業を3回繰り返して出来上がる白砂糖を「三盆糖」と呼び、輸入品に対して「和三盆」のブランドを持ち全国で人気を博すようになりました。
現在も和三盆は菓子作りに欠かせない高級砂糖の代名詞として知られていますが、江戸時代の庶民にはとても口にできないもの。明治時代頃より、年に一度、とっておきの砂糖を使った正月の特別な料理として、雑煮に取り入れるようになったのが「あんもち雑煮」のはじまりといわれています。
もう一つ欠かせない食材に、出汁をとる「いりこ」があります。観音寺港から連絡船で25分乗った伊吹島は、「いりこ島」とも呼ばれる、いりこの名所。
6月〜9月にかけて伊吹島の沖合で漁獲されたカタクチイワシを、高速運搬船で島の加工場に送り、煮干加工します。伊吹島では漁場と加工場が近く、漁獲から加工までを網元が一貫生産することで、上質な伊吹いりこを生み出しています。讃岐うどんの出汁としてもお馴染みの逸品です。
歴史と自然、アートを楽しむ瀬戸内海の島めぐり
瀬戸内海に面する香川県には、伊吹島をはじめ無数の島があります。最も有名なのが映画「二十四の瞳」で知られ、オリーブの産地としても有名な小豆島。高松港からはフェリーで1時間ほどです。かつて塩飽水軍の拠点として知られるのは、丸亀港からフェリーで30分ほどの本島。中心にある笠島地区には「塩飽大工」と呼ばれた名工が建てた、漆喰塗りの白壁やなまこ壁の住居が残され、国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されています。高見島と志々島は映画「男はつらいよ」のロケ地として有名で、志々島には作中で寅さんとマドンナ役の松坂慶子が出会う石段が今も残されています。
自然に恵まれた島々を舞台に3年に一度開催されているのが「瀬戸内国際芸術祭」。「海の復権」のコンセプトのもと、内外から現代作家によるアート作品が集められ、多くの人々が訪れます。
それぞれの島へは連絡線が定期運行されており、穏やかで風光明媚な船旅を気軽に味わえます。香川県では瀬戸内の島めぐりを、ぜひ楽しんでいただきたいですね。
「白味噌あんもち雑煮」(2人分)
- エネルギー 215kcal
- 食塩相当量 1.4g
- ※一人分の値
材料
- 大根1/5本
- にんじん(金時)1/5本
- さといも2個
- あん餅(丸餅)2個
- だし汁2カップ
- 白みそ(甘口)40g~50g
- みつば少量
作り方
- さといもは皮をむいて2つに切って、茹でる。
大根、にんじんは皮をむき、薄い半月切りにする。 - 鍋にだし汁を入れて、[1] を加えて火にかけ、柔らかくなったら、あん餅を入れる。
- [2] に白みそを溶き入れ、軽く火を通す。椀に盛り、香り付けにみつばを飾る。