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全国みそ料理めぐり

奈良県 飛鳥鍋

牛乳をふんだんに使った
薬膳にも通じる鍋料理

貴族が愛し仏僧が伝えた、健康食の先駆け

日本全国、数ある郷土料理の中でも牛乳を使った珍しいメニューが飛鳥鍋です。実は奈良県は日本でもっとも早く牛乳が飲まれた土地柄で、奈良に都が置かれていた西暦650年ころの飛鳥時代に中国から遣唐使が伝えたと言われます。当時「酪」と呼ばれた牛乳や乳製品は、天皇を始め貴人、豪族たちの健康のための「薬」として生産されていたようで、現代人が整腸作用に摂取している乳酸菌にもつながります。やがてこの食習慣は僧侶たちの間にも伝わり、多武峰妙楽寺の僧が唐風若鶏料理に応用し、牛乳で若鶏を煮る「飛鳥鍋」が生まれました。なお、牛乳と同じく奈良で育てられた鶏肉「やまとかしわ」も後に特産品として人気を高めます。その後、飛鳥鍋は庶民間にも広がりますが牛乳が高価な時代はヤギの乳が使われ、現在の飛鳥鍋が奈良県の名物料理として定着するのは昭和に入って以降のことです。 ここで大和鍋(4人分)の作り方を紹介しましょう。材料は大和肉鶏240g、はるさめ40g、しいたけ4枚、白菜400g、春菊80g、人参80g、白ねぎ120g、ごぼう60g、豆腐200g。それに白味噌80g、牛乳320g、鶏ガラスープ400ml、淡口醤油小さじ4を用意します。

はじめに野菜などの具材を食べやすい大きさに切っておきます。次に鶏ガラスープを煮立て牛乳を入れ、白味噌と淡口醤油で味付けし、具材を煮えにくい順に入れていきます。春菊とはるさめは食べる直前に入れ、食べるときは薬味(青ねぎ、しょうが、すだち、一味とうがらしなど)をお好みで添えて添えていただきます。野菜や鶏肉からはたっぷり出汁が出るので、締めにうどんなどを入れても美味しくいただけます。また、最近では「飛鳥鍋」をベースに牛乳の代わりに豆乳を加えた「大和鍋」もヘルシーな新しい郷土料理として好まれています。

牛乳を使うもう一つの郷土料理「蘇(そ)」とは?

中国から奈良に伝わった牛乳は飛鳥鍋以前には「蘇(そ)」と呼ばれていました。蘇は中世を境に製造が途切れたため正確な製造方法が伝承されていない「幻の食べ物」で研究者や学者による推測の域をでませんが、生乳を煮詰めて濃縮し、脂肪分を取り除きさらに熟成させた現代のチーズに近いものものと考えられています。蘇は「醍醐」とも呼ばれ、物事の真髄を表す「醍醐味」の語源になった食品だけに当時は相当珍重されたことでしょう。現在、蘇は奈良県内のいくつかの牧場やメーカーがそれぞれに工夫をこらして再現し、奈良のお土産として人気を得ています。カテゴリーとしてはスイーツに近いものですが、長い歴史が育んだ味を大切に受け継ぐ心意気を感じます。飛鳥鍋同様、奈良に行った折にはぜひ口にしたい郷土料理です。

世界遺産つらなる奈良で国宝の塔巡りを

奈良県は京都と並ぶ国際観光都市として世界中から多くの観光客が訪れます。1993年には「法隆寺地域の仏教建造物」がユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の世界遺産条約に基づき日本初の世界遺産に登録され、その後「古都奈良の文化財」、「紀伊山地の霊場と参詣道」も追加登録されました。飛鳥鍋のふるさと飛鳥地方も「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」として世界遺産暫定一覧表に記載されており、いずれ正式登録される日も近いでしょう。

名刹と呼ばれる寺社仏閣を一つ一つ挙げてはきりがありませんが、ここでは五重塔と三重塔に注目してみましょう。奈良県は国宝に登録される五重塔が3基(法隆寺、興福寺、室生寺)、同じく国宝の三重塔は5基(興福寺、当麻寺西塔・東塔、法起寺、薬師寺東塔)も存在し、いずれも47都道府県中最多です。なかでも法隆寺に建つ日本最古の五重塔と、法起寺三重塔、法輪寺三重塔の3基は斑鳩三塔と呼ばれ、聖徳太子ゆかりの斑鳩の里を眺めながらの散策はとくに人気があります。また、平安時代初期に建立された室生寺五重塔は1998年の台風により倒木の直撃を受け五層の庇すべてを損壊という被害を受けたものの、約2年間の修復工事を経て見事によみがえりその名をさらに高めました。時代を問わない篤い信仰心もまた、奈良県の大きな魅力です。

「飛鳥鍋」(4人分)

  • エネルギー 282kcal
  • 食塩相当量 1.6g
  • ※一人分の値

材料

  • 鶏肉(もも肉・胸肉)合計300g
  • 鶏がらスープ600ml
  • (鶏がらを煮出したもの鶏がらスープの素大さじ1と湯でもよい)
  • 牛乳500ml
  • 白みそ(甘口)80g
  • 味の調整用に塩、又はうすくちしょうゆ少々

具材の例 野菜やきのこは好みのものを用意

  • 豆腐150g
  • みずな100g
  • 長ねぎ100g
  • はくさい100g
  • ごぼう50g
  • にんじん50g
  • しいたけ50g
  • しめじ50g

作り方

  1. 具の下ごしらえをする。
    • 鶏もも肉は食べやすい大きさに切る。
    • その他の野菜やきのこ、豆腐は食べやすい大きさに切る。
  2. 鍋に鶏がらスープを入れて火にかける。
    鶏肉やにんじん、ごぼう、きのこ類、はくさいの茎の方など火の通りにくい具材を入れ、煮立ってきたらアクを除きながら5〜6分煮る。
  3. 残りの野菜や豆腐を加え、みそを溶かし入れたら牛乳を少しずつ加える。
    火を弱めて煮込み、味を見て塩、又はうすくちしょうゆで味を調え、器に取り分けて食べる。

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