「みそポテト」の起源は、秩父の郷土食「小昼飯」
蒸したジャガイモを一口大に切り、小麦粉の衣を付けて揚げ、甘めの味噌だれをかける。このシンプルなメニューは、農作業の合間などに、地元の穀物、農産物を食材として調理した「小昼飯(こぢゅうはん)」の一種として、戦前から食されていたと言われます。疲れていても食が進む、ほどの良いみその甘みと、ジャガイモならではの腹持ちの良さが老若男女を問わず愛されたことでしょう。
本来は各家庭で作られていた「小昼飯」に郷土料理としての価値を見出したのが秩父市です。秩父商工会議所は、秩父地域に古くから伝わる伝統料理・郷土料理を復活させ、観光客向けにも秩父地域の歴史文化の一端として積極的に紹介する取り組みを行いました。地産地消と食文化の伝統継承の一環として、秩父商工会議所観光文化委員会が審査会を催し、取扱店の認定を行い、「ちちぶの和点心 小昼飯」のブランド化を進めます。時あたかもB級グルメが流行する時代、2009年には第5回埼玉B級ご当地グルメ王決定戦に優勝するなど、知名度を広げていきました。現在は秩父市の多くの店でみそポテトを味わえる一方、2015年には秩父市公認のイメージキャラクターとして、みそポテトが大好きな「ポテくまくん」が生まれるなど、その人気ぶりは止まりません。
みそポテトだけではない、秩父はみそグルメの街
秩父市のみそ料理はみそポテトだけではありません。
長瀞駅や御花畑駅などの観光地で、多くの店が軒を連ねているのが「豚肉のみそ漬け」。冷蔵庫が普及する以前、猟師たちが獲物の獣肉を発酵食品であるみそに漬け、保存食にしていたことに由来する、こちらも伝統食です。流通が発達した現在では、全国で愛される名物料理になりました。
さらに奥秩父大滝村の特産品である中津川芋を串に刺し、エゴマを混ぜたみそだれをつけて焼く「中津川いも田楽」。皮がやわらかく、串にさしても割れにくい中津川いもの特性を生かした料理です。このほか、根菜類を使った「みそ漬け」「みそまんじゅう」「みそせんべい」など、おやつにもみそを使った料理が多数あります。そもそも秩父地方には武甲山が見える所では、良い大豆と麦が穫れるという言い伝えがあり、多くの家で自家用の麦味噌が作られてきました。地元素材とおいしい水を使ったみそ醸造業が、秩父の食を支えてきたのです。ジャガイモ栽培も、秩父市皆野町農業委員会が遊休農地解消事業として、毎年「じゃがいも栽培体験」と「収穫祭」を開催するほど熱が入っており、みそとジャガイモは、秩父市のソウルフードと言えそうです。
鉄道が誘う、祭りの里 秩父
秩父を代表する師走の一大イベント秩父神社の「秩父夜祭」は、京都祇園祭、飛騨高山祭と共に日本三大曳山祭の1つに数えられています。このほか山田の春祭り、子鹿野の春祭り、川瀬祭り、浦山の獅子舞など、四季を通じ個性的な祭りが人気です。また、長瀞のライン下りや、三峰神社のトレッキングコース、秩父のシンボル武甲山の麓、羊山丘陵の斜面約17,600平方メートルに40万株以上のシバザクラが広がる芝桜の丘など、美しい自然の名所も数多くあり、多くの観光客で賑わう、関東有数の観光地です。
観光客の足となるのが、1901年(明治34年)の熊谷~寄居間開業を皮切りに、羽生~三峰口間を結ぶ秩父鉄道。生活路線としてはもちろん、1988年に運行を開始した「SLパレオエクスプレス」は都心から日帰りでも利用できる蒸気機関車として根強い人気を保ち、最近では人気アニメ作品とタイアップしたフルラッピング車両も話題を提供しています。
また、熊谷駅からは上越新幹線とJR高崎線へ、寄居駅からは東武東上線とJR八高線へ、御花畑駅からは西武秩父線へとそれぞれアクセスでき、この一帯は多くの鉄道ファンが訪れる鉄道王国としても人気を博しています。
みそポテトをはじめとするみそグルメと、季節の彩りが楽しめる秩父へ、鉄道に乗って行ってみましょう。
「みそポテト」(2人分)
- エネルギー 516Kcal
- 食塩相当量 2.3g
- ※一人分の値
材料
- じゃがいも2個
- 小麦粉100g
- 水70ml
合わせ調味料
- みそ大さじ2
- 砂糖大さじ2
- 酒大さじ2
- みりん大さじ1
作り方
- じゃがいもは蒸して柔らかくなったら皮をむいて一口大に切って、串に刺す。
- 小麦粉と水を合わせて[1] をくぐらせ、180度の揚げ油で揚げる。
- みそだれの材料を小鍋に入れて火にかけてよく練り、冷ます。
- じゃがいもの表面にみそだれを付ける。