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全国みそ料理めぐり

滋賀県 近江牛みそ漬け

牛肉を食べることがタブーとされていた時代に
薬用として考案された献上料理

好みに味付けるみそダレで、近江牛の旨味をより深く

近江牛みそ漬けは、滋賀県で生産される高級な和牛「近江牛」の肉を味噌に漬け込んで作られる漬物です。近江牛は国内最古のブランド牛と言われ、肉質が柔らかく脂肪の甘みが特徴的で、高級な和牛として知られています。

味噌漬けにすることで肉の旨味が引き立ち、まろやかで深い味わいが楽しめます。ご飯のおかずやお酒のおつまみなどに全国的な人気を持つ近江牛みそ漬けは多くの専門店で販売され観光土産や贈答用にも人気がありますが、家庭でも作れます。

まずは近江牛肉の切り落としなど好みの部位を用意し、食べやすい大きさにカットします。次にみそ、砂糖、酒、醤油をボウルに入れてよく混ぜ、みそダレを作ります。密閉容器にみそダレを入れて牛肉を漬け込み、冷蔵庫で2〜3日間寝かせれば出来上がり。牛肉の部位や量、みそダレの味付けなどを好みに合わせられますし、にんにくや生姜、唐辛子などを加えてアレンジすることもできます。食べる際はフライパンに油を敷き、肉の味噌をぬぐって両面を強火でさっと焼き、弱火に通してから盛り付けます。
肉からぬぐったみそダレはみそ汁や野菜炒めなどに使え、つけ合わせにするとより美味しくいただけます。

近江牛みそ漬けが「桜田門外の変」を起こした?

江戸時代、牛肉を食することはタブーとされていました。しかし彦根藩では花木伝右衛門という藩士が中国の明王朝から伝わった書物「本草綱目」を参考に牛肉の味噌漬けを考案、「反本丸(へんぽんがん)」と称し薬用として食されるようになりました。近江牛の飼育も進み、元禄年間からは将軍家及び尾張、紀伊、常陸の御三家へ「養老の秘薬」として近江牛の味噌漬を献上することが慣例になります。

ところが嘉永3(1850)年に井伊直弼が彦根藩主になると屠殺を禁止、献上品も贈れなくなってしまいました。とりわけ牛肉が好物だった水戸藩主徳川斉昭公からは「彦根肉の味噌漬を何卒、贈らせ給へ」と度々依頼があったといいますが、彦根藩では藩命として拒否。

この一件が水戸藩の不興を買い、10年後の万延元(1860)年に水戸藩脱藩浪士らによる井伊直弼暗殺事件「桜田門外の変」をもたらせたというエピソードがあります。桜田門外の変をきっかけに大政奉還への幕が上がったことを考えると、近江牛みそ漬けは歴史の転換点に関与した美味しさと言えますね。

明治にはいると外国人向けに需要が高まり、一般の人々も牛肉を食するようになり、近江牛の知名度は一気に高まります。当初近江牛は横浜まで17〜18日もかけ、東海道を牛追いしながら運んだといいますが、海運業の発達や東海道線の開通により流通量は増え、私達の食卓にも乗るようになりました。

歴史を歩き、日本一の湖を眺める

近江牛みそ漬け発祥の地、彦根は歴史が息づく街として人気があります。中心は国宝彦根城。元和8(1622)年、徳川家康による天下普請のもと大阪夏の陣をはさみ20年もの歳月をかけて完成した彦根城は、江戸時代以前に建造された天守が残る現存12天守の一つ。3階3重の天守を構成する屋根は「切妻破風」「入母屋破風」「唐破風」を配し、2階と3階には「花頭窓」、3階には高欄付きの「廻縁」を巡らせるなど凝った外観で変化に富んだ美しい姿が見られます。また、築城に合わせて造られた城下町は現在も江戸時代の風致を感じられる地区として、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。

時計の針を進めて明治時代に日本を揺るがしたのが「大津事件」。1891年、来日中のロシア皇太子ニコライが警備中の警官に襲撃された事件で、吉村昭の小説「ニコライ遭難」をはじめ多くの小説やドラマが生まれました。いまも事件現場には石碑が建ち多くの歴史ファンが訪れています。

滋賀県には日本最大の湖「琵琶湖」もあります。湖の中心に浮かぶ竹生島に渡る遊覧船からは、静かな湖面に映る四季折々の美しい景色が眺められます。日本最大の琵琶湖を背景に歴史の転換点に立てる滋賀県で、滋味満点の近江牛みそ漬けを味わってください。

「近江牛みそ漬け」(2人分)

写真出典:農林水産省Webサイト:うちの郷土料理 近江牛の味噌漬 滋賀県
  • エネルギー 510kcal
  • 食塩相当量 2.1g
  • ※一人分の値

材料

  • 近江牛ロース肉2枚(約100g)
  • みそ床作りやすい分量で
  • A辛口みそ100g
  • A白甘みそ大さじ3
  • Aみりん大さじ3
  • ししとう6本

作り方

  1. 牛肉は筋を切っておく。
  2. みそと調味料を合わせてみそ床Aを作り、牛肉を漬け込む。好みで1〜3日程漬け込む。みそを拭い取り、焦がさないように焼く。ししとうも一緒に焼き、添える。

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