世界一の大きさを誇る渦潮の鳴門。激しい潮流が育てた「鳴門わかめ」
徳島県の特産品にして料理の主役、「鳴門わかめ」。平安時代から朝廷への貢ぎ物として重宝されていたと言いますから、およそ1千年もの歴史があるわけです。時を経て、昭和33年に徳島県の水産試験場が養殖実験に成功し、わかめの養殖が本格的に⾏われるようになりました。その後、保存のために湯通しして食塩を混ぜ合わせる塩蔵わかめが生産されるようになると、関西を中心に全国で高い評価を得るようになり、徳島県を代表する特産品になりました。
「鳴門わかめ」の漁場は、四国と淡路島の間にある鳴門海峡。日本国内でもっとも速い潮流があり、世界一の⼤きさを誇る渦潮が有名です。見た目は恐ろしいほどの速く激しい潮流が、シコシコとした歯ごたえと風味に優れた「鳴門わかめ」を育てます。
「鳴門わかめ」は水でさっと洗い、塩を落とし、戻して熱湯にくぐらせ、食べやすい大きさに切ります。わけぎと酢みそを和えますが、徳島県の特産品といえば、すだちも忘れてはいけません。全国シェアほぼ100%といわれ、酢みそ和えに一味足せば、独特のさわやかな酸味とすがすがしい香りを楽しめます。すだちの旬は夏から秋ですが、最近は貯蔵技術の進歩で、1年を通しておいしいすだちが手に入ります。
徳島の海の幸と、バリエーション豊富な酢みそ和え
みそに、砂糖、酒、みりんを加えて弱火で煮込み、酢、からしで味を整える酢みそは、市販品が店頭に並ぶほど、一般的な調味料になりました。せっかく作った酢みそを、鳴門わかめだけで味わうのはもったいない。そこでオススメが、徳島県の海で獲れる魚介類。いわば鳴門わかめの家族です。
瀬戸内海、紀伊水道、太平洋と、性質の異なる三つの海に面した徳島県は漁業の宝庫。古くから底びき網、定置網、パッチ網、一本釣、はえ縄、海士などの沿岸漁業が盛んで、マダイやシラス、ハモなど海の幸に恵まれた土地柄です。マダイは三枚におろし、腹側の皮をひいて削ぎ切りの刺身に。シラスはキュウリや菜の花と和えて。ハモはサッと塩茹でし、氷水で冷やして水分を取ります。 また、吉野川をはじめとする河川ではアユ漁が盛んに行われています。アユは表面のぬめりを取り塩をふって締め、内臓を取り背骨ごとぶつ切りにし氷水に浸す背越しと呼ばれる調理法にマッチします。
こうして見ると、徳島県そのものを酢みそ和えにしたくなるほど、相性の良い料理なんですね。
潮目のごとく変わりゆく観光地 鳴門
徳島県といえば400年を超える歴史を持つ伝統芸能「阿波おどり」、毎年8月の開催時期は、国内外から100万人を超える観光客が訪れます。また、徳島市の中心部にある阿波おどり会館は1年を通して本場の阿波おどりがみられ、「踊らにゃ損損」 のフレーズ通り、希望者も一緒に踊ることができます。本文中でも紹介した「鳴戸の渦潮」も、徳島県が世界に誇る観光地で、瀬戸内海と紀伊水道の干満差により発生する渦は、春と秋の大潮時には最大直径20mにも達し、その大きさは世界一といわれています。かつては海の難所として知られましたが、現在はうずしお観潮船が満員の客を乗せて行き交う観光名所となりました。1985年には兵庫県の南あわじ市と鳴門市を結ぶ全長1629mの「大鳴門橋」が完成し、橋上の遊歩道・渦の道からも迫力ある渦潮を見ることができます。なお、大鳴門橋は渦潮の発生に影響を与えないために、多柱基礎工法という特殊工法が用いられており、渦潮への愛着が感じられます。
1998年鳴門市に開館した大塚国際美術館は、世界26カ国の美術館が所蔵する古代から現代までの名画の数々を、原寸大で陶板の上に忠実に再現した異色の美術館。古代遺跡や礼拝堂などの壁画を空間ごと再現する環境展示が呼び物となっています。
鳴門わかめをはじめとする海の幸に、阿波おどり、鳴門の渦潮に、国際美術館。いまや徳島は、世界が注目するスポットです。
「鳴門わかめの酢みそ和え」(2人分)
- エネルギー 64Kcal
- 食塩相当量 1.9g
- ※一人分の値
材料
- 鳴門わかめ(塩蔵)1カップ
- わけぎ1束
酢みそ
- みそ大さじ3
- 砂糖大さじ1
- 酒大さじ1
- みりん大さじ1
- 酢大さじ1
- からし小さじ1
作り方
- 酢みその材料を合わせて弱火にかけ、手早く練る。冷めたら、酢、からしを混ぜる。
- わかめは戻して熱湯にくぐらせ、食べやすい大きさに切る。わけぎは熱湯で茹で、ざるに取り、ぬめりを取って4cmに切る。
- わかめとわけぎを和え、酢みそをかける。
TIPS
みそは練っておくと冷蔵庫で1ヶ月は保存できます。酢みそのような料理に展開できるのでとても便利です。