冬の味覚ズワイガニをつかった庶民派料理
冬に味わう日本海の味覚といえばカニ料理、鳥取県は「蟹取県」を名乗るほどカニの産地として知られカニの水揚げ量、消費量、養殖場面積などで日本一を誇ります。江戸時代の1782年に津山藩への贈答品目録としてカニが登場するほど長い歴史を持ち、いまや松葉ガニの養殖場は東京ドーム2,340個分もの広さ、総務省統計局の家計調査によれば鳥取市のカニ消費量は全国平均の5倍にも当たります。県内岩美町の中学校では給食に一人一杯の松葉ガニが登場し話題になりました。県内には多くのカニ料理店が味を競い、茹でガニ、焼きガニから刺身、鍋、天ぷら、寿司、カニ味噌など様々な料理を楽しめます。
鳥取県で水揚げされるズワイガニのうちオスは「松葉ガニ」と呼ばれ、メスは卵を抱えている姿から「親ガニ」と呼ばれます。地域によっては甲羅の上からオレンジ色の卵が透けて見えるメスは子を背負っていることから「セコガニ」「セイコガニ」とも呼ばれています。
親ガニは松葉ガニより小さく、旬の時期は県内のスーパーなどで比較的安価に購入できるため親ガニのみそ汁は各家庭の食卓で日常的に食べられています。
親ガニ独特の味わいを、いつものみそ汁感覚で
ズワイガニのメス、親ガニは甲羅の中に内子(うちこ)、おなかに外子(そとこ)を抱えています。内子はカニの卵巣のことで生では紫色ですがボイルするとウニのように鮮やかなオレンジ色になります。濃厚な独特のコクがあり内子だけを詰め込んだ缶詰があるほどの珍味です。一方の外子はカニの卵、腹部の「ふんどし」と呼ばれる部位を開くと茶色い小さな粒が詰まっており魚卵のようにプチプチした食感が楽しめます。
この親ガニ独特の旨味を存分に味わうため「親ガニのみそ汁」は材料も調理法もとてもシンプルです。材料は4人分で親ガニを2杯、大根を1/2本、好みの味噌を適量、それに水1500ml。大根は短冊状に切り、親ガニは腹から半分に割ります。親ガニは水から茹で、水が沸騰してからさらに15分間煮ます。大根を入れて火が通るまで弱火で煮、最後に味噌を入れて味を整え出来上がり。親ガニは水から茹でることで出汁が出て、大根にしみて美味しくなります。
オスのズワイガニ(松葉ガニ)の漁期が11月~3月であるのに対し親ガニは漁獲時期が11月上旬から12月に限定され食べられる期間が短く、旬のみに味わえる貴重な地元料理です。
ダイナミックな砂丘としっとりとした街並み
味覚の代表がズワイガニなら観光スポットの代表は鳥取砂丘、鳥取駅からバスで約20分と手頃な距離に東西16キロメートル、南北2キロメートルの日本最大級のスケールを持つ大砂丘が広がっています。鳥取砂丘は日本海の砂浜から風で運ばれてきた砂がつくる海岸砂丘で、「馬の背」と呼ばれる高さ47mの丘に登ると雄大な日本海が一望できます。風が描く砂の波模様、風紋や、乾いた砂が斜面を流れ落ちてゆく砂簾、砂の表面がゴツゴツと突起する砂柱など自然が生み出すダイナミックな芸術はいつまでも見飽きません。
随所に残る美しい町並みも鳥取県の魅力です。智頭町は因幡街道と備前街道が交差する鳥取藩参勤交代の宿場町として栄え、往時を偲ばせる町屋の建物や道標が残っています。倉吉は打吹城の城下町として武家屋敷が多く建ち、現在は白壁土蔵や町家をリノベーションしたショップやカフェが人気です。若桜鉄道でゆく若桜町は鳥取と姫路を結ぶ街道の宿場町として発展し、現在は白壁土蔵と古寺が並ぶ通りとカリヤと呼ぶ雪よけの庇に面影を残しています。
日本海で絶品のカニを味わい砂丘で自然の景観に触れ、古い町並みで歴史を体感できる鳥取県は、多くの観光客に愛されています。
「親ガニのみそ汁」(2人分)
材料
- かに小1杯
- 昆布だし2カップ
- みそ大さじ1弱
- 青ねぎ少量
作り方
- かには足を取り、胴のところは殻を取ってガニなどを取り、食べやすい大きさに切り、さっと酒をふりかける。
- 昆布だしにかにを入れ、沸いたらあくを取る。みそを溶き入れ、10分程煮て味を出す。好みでねぎの小口切りを散らす。