諸説ある「いとこ煮」の由来に親鸞聖人?
郷土料理にはこれまで紹介してきたものだけでも、「かけ和え」「どぶ汁」「どて焼き」などユニークな名称が多くあります。土地の人にしかわからない独特の言い回しが郷土料理の存在感を際立たせるのかもしれません。
富山県の「いとこ煮」も名前を聞いただけでは想像がつきません。由来は諸説あり、小豆を中心にごぼう、大根、にんじん、里芋など「いとこ」のように近しい根菜類を入れることからとか、硬い材料から追々煮ていくため「追々」が「甥甥」に通じるためなどと言われています。
もう一つ、いとこ煮は浄土真宗の開祖・親鸞聖人の命日に行われる「報恩講」の法要で食されることから、親鸞聖人の遺徳を偲ぶ「遺徳(いとく)」が訛ったという説もあります。富山県は寺院の7割を浄土真宗が占める土地柄で、毎年11月28日に行われる報恩講は、農家にとって稲の取り入れが済み収穫祭の意味合いも兼ねた大切な行事でした。家族や親戚が集まり僧を呼び、読経と説教に続いて和やかな宴が催されます。酒と料理でもてなす御膳の主役がいとこ煮で、使われる野菜は地域によって異なりますが親鸞聖人の好物小豆は必ず用いられることが、この説の裏付けと言えるでしょう。信仰とともに大切に守られてきたいとこ煮は、現在、観光客にも人気の伝承料理として積極的に作られています。
煮崩れに気をつけ、ゆっくり丁寧に味わう
いとこ煮の材料は4人分で、小豆1/3カップ、大根80g、ごぼう20g、にんじん25g、里芋130g、板こんにゃく1/3枚、厚揚げ1/3枚、焼豆腐1/3丁。前述したように野菜は地域により異なりますからお好みで。調味料として味噌大さじ1、しょうゆ大さじ1、だし汁3カップと適量の水を用意します。
まずは小豆を柔らかく煮ながら、大根、にんじん、里芋、ごぼうの皮をむき、さいの目に切ります。ごぼうは切った後で水にさらしアクを抜きましょう。油揚げとこんにゃくは湯通しを行い、さいの目に切り下ごしらえは完成です。煮立てただし汁に大根とごぼうを入れ中火で煮、大根がやわららかくなったら、にんじん、里芋、小豆、こんにゃくを加えてさらに煮ます。野菜がやわらかくなったところで厚揚げと焼き豆腐を入れ、味噌と醤油で味を調えながら3分ほど煮て火を止めます。小豆が割れたり煮崩れしたりすると見た目が悪くなりますから、煮過ぎないように丁寧に煮込むことがポイントです。黒部市などの県東部では「煮た菜」から「にざい」とも呼ばれ、材料を大きめに切るスタイルもあります。
ファンならずとも楽しめる、富山のユニークな鉄道
2015年の北陸新幹線開通で都心からのアクセスがぐっと身近になった富山県は、ユニークな鉄道が人気です。まずは富山駅を起点とする路面電車網。全国で路面電車の廃止が相次ぐ中、富山県では2006年開業の富山ライトレールをはじめ市民の足として活用されてきました。モダンなデザインの最新式低床車両からレトロスタイルの観光車両、昭和30年代から変わらない姿で走り続ける車両も建材です。富山地方鉄道ではかつて西武や京阪で活躍していた車両が現役で走る風景も人気で、とくに西武特急レッドアローを著名デザイナー水戸岡鋭治氏がリニューアルしたアルプスエキスプレスは温かみのある内装が高い評価を得ています。
温泉で有名な宇奈月駅から欅平駅まで1時間余を走るのは黒部峡谷トロッコ電車。可愛らしい電気機関車が牽引する野趣あふれるトロッコ車両からは、春の残雪、初夏の新緑、夏の涼風、秋の紅葉と一年を通じ黒部峡谷の大自然を目の前で味わえ、ときにはニホンザルやニホンカモシカ、ツキノワグマ、ノウサギなど野生動物との出会いもあります。 皆さんも富山県で歴史あるいとこ煮と鉄分をたっぷり吸収してください。
「いとこ煮」(2人分)
- エネルギー 171kcal
- 食塩相当量 2.4g
- ※一人分の値
材料
- だいこん100g
- ごぼう5cm
- にんじん1本
- さといも2本
- かぶ1個
- こんにゃく1/2枚
- ゆであずき50g
- だし汁2.5カップ
- みそ大さじ2
作り方
- だいこん、にんじん、さといも、かぶは皮をむいて1cm角に切る。
- ごぼうは皮をこすり洗いし、こんにゃくは下茹でして1cm角に切る。
- あずきは茹でて柔らかくする。
- 鍋にだし汁を入れて野菜、こんにゃくを加え、柔らかくなるまで煮る。
- あずきを加えてみそを溶き入れ、5分程煮て味をなじませる。